〇第16:如来寿量品
 法華経の二つの柱の第一である方便品では、<空>の教えから展開される諸法実相・十如是の法門を お説きになりましたが、そのような冷厳な哲学的理論をすぐ自分の人生に結びつけうるのはよほど すぐれた人であって、一般大衆にとってはむずかしい注文です。そこで、お釈迦さまは、その教えを 人間に即して<人間の本質は仏性である>という方向へ、次第次第に解きすすめてこられました。 そして、ついにこの寿量品においてすべての真実を説き明かされるのです。  すなわち、仏の本体は永遠不滅の久遠実成の本仏であり、人間はーーー人間以外の万物もーーー その本仏の実子であることを明らかにされるのです。表面では「仏は滅せず」と説かれていますが、 真の眼目は「仏の実子である人間の仏性も不滅である」ことを悟らせようとの、み心であることは 明らかです。  そこで、冷厳な<空>の悟りに、人間的な温かい血が通いまじめ、人びとは「自分は久遠の本仏の いのちに生かされているのだ」という有難い思いに包まれるのです。これが宗教的な悦び、すなわち 法悦の極致であり、そういう悟りに達しえた時、本当に救われたということができるのであります。

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